「わたし、大きくなったらにゃんぷっぷーとけっこんする」
そう言って、みぃちゃんはぼくに微笑んだ。
ぼくには人間みたいな細い指がないから、みぃちゃんはゆびきりげんまんの代わりにぼくの前足を握った。
「約束だよ、忘れないでね」
ぼくはそれが嬉しくて、みぃちゃんにすぐに返事をした。
「うん!ぜったいに忘れないにゃ!」
─────────
「みぃちゃん起きて〜!遅刻しちゃうにゃ〜!」
ぼくがベッドの上で跳ねると、布団がもそもそと芋虫のように動いた。
「やめて…今日は朝練ないから…寝かせて…」
「にゃ?そうだっけ?」
「う〜〜〜……」
布団の中からみぃちゃんがすごい顔で出て来る。髪はボサボサで、目は半分しか開いてないし、
大きな口であくびをしている。
「おはよう、みぃちゃん!」
「…おはよ…」
のそのそと部屋を出るみぃちゃんの後ろに着いて行く。みぃちゃんは朝が苦手なのだ。
そんなみぃちゃんを起こすのがぼくの日課だった。
「あら、今日朝練無かったんじゃないの?」
みぃちゃんのお母さんがキッチンに立っている。朝ごはんのトーストが焼ける良い匂いが漂ってきた。
「ぼくが起こしてあげたの!」
えっへん!と胸を張ると、みぃちゃんは不機嫌そうにぼくの頭をわしわしと撫で回す。
「無理矢理起こしたの間違い…」
「うにゃあぁ〜」
お母さんはみぃちゃんにトースト、ぼくには猫缶を持って来る。
「いつもありがとうね。みぃはもうにゃんぷっぷー無しじゃ朝起きれないからね〜」
「大丈夫にゃ!」
ぼくは今日いちばんの大きな声で言った。
「ぼく、みぃちゃんのお婿さんになっても毎朝起こしてあげるからね!」
「…」
みぃちゃんは何も言わずに牛乳を飲んでいる。
「あらあら、ふふっ」
お母さんは楽しそうに笑っている。
分かってる。ふたりとも、ぼくの言葉を本気だと思っていない。
でも、ぼくの気持ちはウソでも冗談でもない。
ぼくはみぃちゃんが好きだ。ずっとずっと昔から大好きだ。
これからも、ぼくは毎日みぃちゃんにこの気持ちを伝え続けるだろう。
「ぼく、みぃちゃんが大きくなったら結婚するんだ」